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​パイプとコーヒーの話

かふぇいん

パイプの親友は何か?と言う問いかけには十人十色、様々な答えがあるだろう。「やはり洋酒のウイスキー」と言う人もいれば、「いやいや、同じ洋酒でもブランデー方が」という人もいるだろうし、「英国人を見習って紅茶を合わせるべきだ」なんて人もいるだろう。

そうは言っても多くのはコーヒーがパイプの親友とまではいかなくても友達、位には認めているのでは無いだろうか(無論世の中にはコーヒーが苦手の人もいるのだろうけれど)。因みに当会、パイプレストスモーキングクラブの定例会は大抵コーヒーをお供に催されていまるので少なくとも十数人の会員諸兄は私のこの主張に賛同してくれるのでは無いだろうかと思う。

やはり煙草を楽しむには何かしら飲み物が欠かせない。これはウイスキーを楽しむのにチェイサーが、紅茶を楽しむのにミルクと砂糖が必要なのに似ている。葉巻も紙巻き煙草と比較すれば圧倒的に長いが、それにも増してパイプの喫煙時間は長い。上手いスモーカーなら大ぶりのパイプでワンボウル灰にする間に「ドクドルジバゴ」や「アラビアのロレンス」をエンドロールまで観ることが出来るだろう。残念ながら若輩者の私にはまだまだそんな芸当はできないが、それでも1時間以上、場合によっては2時間近くかかる(と言っても多くの場合はせかせかと再着火をしながらなのだが)。その間ずっと熱い煙を口の中で循環させているわけだから、口直し、口冷やし、として飲み物は欠かせないのだ。煙草の味わいは時に苦いものになる。そんな時にコーヒーの酸味は舌のリセットとして大変重宝するのだ。

あんまり置いている店は無いが、特に私は一般的に「フレンチ」と呼ばれているコーヒーが好きだ。一般的なブレンドコーヒーやアメリカンコーヒーと比べると少し濃厚で酸味が強く、奥行きのある苦味がある。イングリッシュミックスチュアなど上手く味を引き出すのが難しく、味の辛くなりがちなブレンドを楽しむ際には欠かせない。パイプはリラックスして余裕を持って楽しむ必要がある。上手く火が回らなかったり、タンパーワークに難儀したりと気持ちが逸るような時には机の上のコーヒーを一口が役に立つ。

そして何より喫茶店の古びた座席で白いチャイニーズに注がれた「悪魔のように」黒いコーヒーと、好みの銘柄を詰めたパイプ。この雰囲気がたまらなく好きなのだ。コーヒーそのものよりもそれを取り巻く雰囲気が好き、と言ったところだろうか。

何はともあれ私にとってコーヒーはパイプの最良の友であり、美味しく煙草を楽しむには欠かせないものなのだ。

とは言ってもこの組み合わせには構った面もある。空腹の食前にコーヒーと共に一服を楽しむと往々にして腹を下すことになるのだ(私の腹が弱いというのもあるのだろうけれど)。コーヒー自体胃に対しては刺激物になりうるそうだが、加えて口内のニコチンをコーヒーと一緒に飲みくだしてしまうことで胃からニコチンを吸収することとなってしまい、胃を痛める事に繋がるのでは無いだろうかと想像している。お世辞にも身体によろしいとは言えないので皆さんは空腹時のコーヒーをお供にした喫煙は控えるようにしよう。いやはや、「美味しい」ものにも棘がある、ということだろうか。

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